ETA治療とは

ETA™( Endoscopic Topical Application™ )治療では、《先端に液体吸収材(保持材)を装着した薬剤液注入・塗布用の注入管》と《その注入管に対応する吸引管》および《内視鏡本体におけるこれらの管の移動・固定の為の補助装置》を備えた内視鏡を用います。これらの医療器具に加えて、注入管および吸引管にそれぞれ接続する注入機および吸引機を適切に制御することにより、内視鏡のモニター下において、当該液状薬剤を目的の局所表面に確実に塗布し浸透させることが可能となります。

下図に示すようなETA治療の為の医療器具(試作品の一例として示す)を搭載した膀胱内視鏡を用いることにより、頻尿・夜間頻尿や膀胱痛に関する知覚神経が豊富な膀胱粘膜の特定の部位に局所麻酔薬や硝酸銀等の医薬品を必要量で塗布することが可能となりました。

ETA治療の為の医療器具(試作品の一例として示す)の外観
① 先端に円形の液体吸収・保持材を装着した薬剤液注入・塗布用の注入管が、対応する吸引管に挿入された写真

② 上述の注入管を、吸引管に対して前方に移動した写真
③ 注入管および吸引管の移動・固定の為の補助装置(内視鏡に装着して使用する)の写真

ETA治療では、管腔臓器(気体の灌流下)において粘膜表面や病変部に薬剤液を適量・適切に塗布することができ、しかも注入した薬剤液が液垂れしないように余剰薬剤液を適宜吸引しながら塗布投与する、という新しい内視鏡治療が可能となります。一般に膀胱や大腸等の粘膜表面に対して、腔内注入・噴霧を実施しにくい比較的高濃度の薬剤や作用の強い薬剤を必要部位にのみに確実に治療塗布する際には、塗布した薬剤液が意図しない周囲部分に拡散・液垂れしないように投与する必要があり、このような場合にはETA治療が大変有用と考えられます。

さらにETA治療では、塗布対象部位の粘膜・病変部の表面に付着する水分を塗布開始前に液体吸収材を通してしっかりと吸引除去することにより、注入管から注入された医薬品をその高い濃度のままで塗布投与できるという利点があります。例えば、膀胱粘膜の表面はグリコサミノグリカン(GAG)の層によって覆われ、すなわち粘膜表面がヌルヌルの状態となってバリアされていることが知られていますが、ETA治療を始める前の塗布対象部位において付着水分除去の吸引にて付着水分を可及的に除去することにより、当該部位における医薬品の非付着性を改善し、また塗布した医薬品が薄まることを防ぐことが期待されます。

以上のように、ETA治療では塗布という比較的安全・容易な手技により、病変部の局所において効率的・効果的に医薬品による治療効果を期待することができます。従来の内視鏡的治療では、病変部を「焼く(電気的焼灼)」、「切る(電気的切除)」、「打つ(薬剤の粘膜下・筋肉内注射投与)」といったモダリティが中心となっていましたが、今回、ETA治療に基づく 『 塗る(医薬品の塗布投与) 』 という新しい治療モダリティが開発され、内視鏡的疾患に対する治療戦略の選択肢が広がりました。

一方で、内視鏡検査・治療は様々な診療分野で低侵襲医療としての役割を拡大させ続けており、膀胱・尿道のみならず、消化管、気道や耳鼻咽喉科領域、関節腔内等でもETA治療の適用・展開が期待されます。

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